全国で最も早い時期に
珈琲に触れた街
1857(安政4)年に箱館奉行所が薬用として珈琲を配ったという記録が残るなど、函館は全国でも最も早い時期に珈琲が飲まれた地域のひとつです。
この事実は、箱館奉行所開所以来の公文書を書き留めた「蝦夷地御用留」という書類に残されているもので、この中で、蝦夷地の御用所へ、“かっけを防ぎ湿邪を払う”ことを目的に珈琲豆を配布していたことが記載されており、さらに、“黒くなるまでよく煎り、細かくたらりとなるまでつき砕き、二さじ程を麻の袋に入れ、熱い湯で番茶のような色にふり出し”と飲み方についても細かな記載がされていました。
開港以降の「ハイカラ文化」の
象徴としての珈琲
幕末の開港によって、いち早く海外の文化を受け入れた函館には、明治後期から昭和初期にかけて、西洋式ストーブや西洋料理店、気候測量所など、北海道初、日本初となるものが数多く誕生しました。それらのひとつとして、珈琲を扱う喫茶店、いわゆるカフェがハイカラな西洋文化の象徴として街に定着し、最盛期には100件余りのカフェが軒を連ねていたということです。
現代函館で函館の珈琲文化に
触れるカフェ巡りを
往事、ハイカラ文化を築いた函館山周辺の地域には現在も当時を偲ばせる多くの魅力的な建築物が残されており函館観光のハイライトのひとつとなっていますが、カフェにリノベーションされた明治や大正の建造物で当時の賑わいを想起しながら珈琲を飲むひとときは、函館の歴史に触れる意味深い体験となります。
このコンテンツでは、歴史ある老舗珈琲店、ハイカラ文化を偲ばせるレトロな珈琲店、地元にも人気のほっとひと息つける珈琲店、職人気質で味を探求する珈琲店など、函館観光を彩る珈琲店をご紹介します。
函館のコーヒー文化に触れるカフェ巡り
珈琲焙煎工房 函館美鈴 大門店
1932(昭和7)年に珈琲と洋食器の店として創業した、北海道で一番最初の珈琲豆卸問屋である鈴木商店の直営第一号店として、1946(昭和21)年にオープンした函館美鈴大門店。函館の珈琲文化を牽引し、現在、全国にその名を誇る珈琲ブランド「美鈴」の店名は同店オープンに合わせ函館市民に公募し命名されたものです。店舗では、コーヒーを楽しめるのは勿論のこと、コーヒーの存在感が強くて嬉しい「珈琲ソフトクリーム」、さらに、珈琲がひきだすビターなコクがスパイスとマッチする「焙煎珈琲カリー」まで、コーヒーづくしで楽しむことができます。
- ■住所
- 函館市松風町7-1
- ■電話番号
- 0138-23-7676
- ■営業時間
- 10:00~18:00
(焙煎受付は~17:30) - ■定休日
- 1月1日
- ■駐車場
- なし
十字屋珈琲店
1932(昭和7)年に創業、カール・レイモンのソーセージなどの厳選商品を取り扱うセレクトショップとして函館の食文化の発展を牽引、同年より北海道で最初となる珈琲豆の販売も開始しました。5代目店主の研鑽により生み出された「十字屋ブレンド」「十字屋マイルドブレンド」は十字屋の伝統の深煎りをベースに酸味などを加えたもので、看板商品として好評を得ています。「2016年からは函館朝市内にコーヒースタンド「十字屋珈琲店」を出店しこだわりの挽きたてハンドドリップ珈琲を提供、活気あふれる朝市の中でほっと一息つける空間を提供しています。
茶房ひし伊
重厚感ある黒漆喰の外観が印象的な大正期建築の質蔵をリノベーションした喫茶店。店内も質蔵そのままの剛健な梁が露出するロフト階など、質屋の名残を感じながらゆっくりと寛げるレトロな空間が広がっています。メニューは、珈琲をはじめ、お抹茶セットやあんみつ、パフェなどのスイーツのほか、サンドウィッチなどの軽食も用意されています。また、建物内には、アンティーク小物、和洋骨董、大正時代の古着物などを取り扱う「古きものなどなど」が併設されており、お買い物を楽しみながら和洋折衷のノスタルジックな雰囲気を感じることができます。
茶房旧茶屋亭
開港以降、函館で流行した和洋折衷住宅を象徴するような1階が和風で2階が洋風の店舗は、明治末期の海産商の店舗兼住宅を1922年に大正ロマン漂うサロンとしてリノベーションしたもの。店内には和洋折衷でノスタルジックを感じる装飾や調度品が並んでおり、明治大正時代にタイムスリップしたような非日常的な感覚を覚えます。珈琲豆の選定に1年以上をかけた三年熟成珈琲やお客様の目の前で点てる抹茶、手作りのスイーツなど、こだわりと誇りを持ったメニューで、ハイカラ文化が浸透した往事の函館の賑わいに想いを巡らせてください。
ロマンティコロマンティカ
淡いブルーの外壁が可愛らしい1918(大正7)年建築の施設1階に店舗を構えるロマンティコロマンティカは、「ロマロマ」の愛称で函館市民からも人気のカフェです。建物のエントランスホールには大正ロマンを感じさせる雰囲気が漂っていますが、真っ赤なドアの先にある店内にはカラフルでポップな小物で演出されたわくわくする空間が広がっています。珈琲は開店当時では馴染みの薄かったエスプレッソマシンを導入し、現在まですべての珈琲メニューをこのマシンで提供。柔らかく丸みのあるエスプレッソをベースにした様々な珈琲メニューを楽しむことができます。
- ■住所
- 函館市弁天町15-12佐藤商会1階
- ■電話番号
- 0138-23-6266
- ■営業時間
- 11:00~20:00(LO 19:00)
- ■定休日
- 火・水曜日
- ■駐車場
- あり(6台)
café D’ici
函館山の麓、函館山ロープウェイ山麓駅よりまっすぐ下った南部坂の中腹にあり観光途中の休憩にぴったりの立地ですが、多くの函館市民で日々賑わうcafé D’ici。代表の「お客様それぞれのいい時間、美味しい時間の提供が目標。函館の日常を、ゆっくりとぼんやりと味わっていただきたい。」の言葉通り、さりげない小物で演出された店内は落ち着ける優しい雰囲気に包まれています。こだわりの珈琲と、珈琲に合うケーキ、焼菓子、パンなどをこだわりの食器でいただきながら、南部坂の往来をぼんやり眺める贅沢で優しい時間をお過ごしください。
ブルースの木
選りすぐりの個性豊かなスペシャルティ珈琲豆を毎朝焙煎して量り売りする珈琲豆のプロショップ。夫婦ふたりで切り盛りする同店は、イートイン・テイクアウトのどちらも可能で、店主が抽出する温かいネルドリップ珈琲と奥様の明るさと人柄に数多くのリピーターが集う。また、10時間かけて点滴で抽出するダッチコーヒー(アイスコーヒー)は自慢の逸品で、2024年から販売を開始した「ダッチ・オレンジ」も大好評。豆屋としてのコダワリを強く持つ同店では、『珈琲のある豊かな暮らし』を提案し続けており、通販でも焼き立ての豆を全国に届けている。